2019年7月 3日 (水)

部落差別をつかまえる

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2020年4月に人権まちづくりセンターが人権平和センターに変わることになっていますが、これは豊中市の「同和」行政の分岐点になります。

この問題の基本は、部落問題の解決をいかに図るかということにありますが、その「導きの糸」となるのは、2018326日に出された「同和問題解決推進協議会答申」(以下、「答申」という)です。「答申」の「市民啓発」のところに「拠点としての人権まちづくりセンター」という項がありますが、この部分は「答申」の肝の一つですが、こう書いてあります。

豊中市にこれを具体化する気があるなら、当然「骨太の提案」があってもいいはずですが、未だそうしたものはなく、二つの人権まちづくりセンターの複合化・多機能化ということしか提示されていません。結局のところ、市の考えから見えてくるのは、一つは、隣保館・児童館をなくし、それに伴う事業も縮小(廃止)するということです。もう一つは、部落問題の解決は公的責任というこれまでの基本姿勢から後退し、行革路線が「同和」行政を呑み込むこともよしとしていることです。これは、庁内において「人権派」が衰退し、「行革派」が増長してきていることの結果だと言えますが、「抵抗勢力」と言われてもいいから頑張る者もいないのが残念です。

では、部落差別は今、どうなっているのか?と問えば、「環境改善等の分野では、大きく改善が進みましたが、地区問い合わせや差別落書きなどが未だ発生しており、近年ではインターネット上で差別を助長する情報等が流布されるなどの問題があります」という答えが返ってきます。

「答申」の2ページにこう書いてあります。

「答申」の内容を検討するに際して、執筆に当たったメンバー4名の起草委員)は差別を受けてきた当事者の声を聞く機会を得ることができた。その場で、差別に傷つき、不安にさいなまれる同和地区の人々の経験と思いを改めて突き付けられることとなったのである。

日常生活の場面で、近隣住民が口にする差別発言を耳にした際の心情、あるいは自身や近親者が経験した結婚差別と、その経験から子どもの将来について抱いてしまう不安な思いがそこでは語られた。

「差別事件」として顕在化することがないのは、差別による反対を受けたとしても本人の結婚の実現を願う切実な思いや、日々耳にする差別発言に対してはさらなる差別の言葉が発せられることを恐れて抗議する言葉を飲み込むしかないという現実があることが推測される。

さらに、不動産のチラシに物件の近辺にある「まちづくりセンター」が記されていない地図が掲載されているのを目にすることは、周囲が抱く差別意識の存在を突きつけられていることにほかならない。

「現在もなお部落差別は存在する」という認識は、豊中市においても当てはまると言わざるを得ないのである。

 いわゆる部落問題の研究者・専門家と言われるような人たちが、当事者の話を聞いてこういう文書を書いたわけですが、これをどう読み取るのか?このところをきちんと理解しないと、部落問題はわからないと思います。

4人の起草委員は、部落問題についてそれなりにわかっていると思っていたが、話を聞かれてハッとしたんだと思います。部落差別というのは一括りにはできない、表には現れない深いものがあるということに改めて気づかれたんだと思います。だから、こういう書きぶりになったんだと思います。言葉を変えて言うと、「心情、不安感、沈黙の内にこそ差別が潜んでいる」ということだと思います。

「もう部落差別はないんや」と言う人が少なからずいます。「それ、ほんまか?」と。「じゃあ、どこに・どう差別があるんや」と反論されたときに、どう答えるのかということです。表に出ない、見ることができない部落差別をどう見抜いて、どう語るのかということが問われるわけです。

部落差別の一番の問題は、私たちが暮らしている地域社会に日常普段に息づいているということではないかと思います。それは浮遊物のように漂い、時に私たちを不安にし、時に人々の奥底にある差別意識を刺激して事件となります。

それをつかまえるためには、「二つの力」が必要だと思います。それは「想像力(イマージネーション)」「共感力(シンパシー)」です。差別問題には差別を受ける当事者がいますが、その当事者を具体的に思い浮かべることができるかどうかです。部落とそこに暮らす人たちとの接点がなければ、部落差別はジブンゴトにはならず、判で押したような言葉でしか語れないでしょう。持っている知識と体験、経験を総動員し、想像力を巡らし、当事者への共感を呼び起こすことができるかどうかということになります。

それをまざまざと感じたのが、2019628日の「ハンセン病家族被害訴訟」での熊本地裁判決です。国による隔離政策が就学拒否や村八分、結婚差別や就職差別などの差別被害を生み、個人の尊厳にかかわる人生被害で、不利益は重大だと指摘し、国に賠償を命じました。ハンセン病に対する的確な知見と元患者や家族が味わった差別に対する深い洞察と人間的なまなざしが見て取れます。

部落問題についても同じです。地区問い合わせや差別落書き、ネット上の書き込みなどは大きな問題ですが、問題の根本はその先、すなわち、部落差別そのものを解き明かし、無化することにあります。そのためには、「二つの力」と当事者とが出会い、部落問題の新しい世界を拓くことが必要です。豊中市はこれまで「同和」行政を積極的に推進してきた数少ない自治体で、その足跡は誇っていいと思います。失われた「想像力と共感力」の再生を図り、あるべき姿に立ち返ってほしいと思います。

(by SSK)

2019年6月13日 (木)

2019特別講座「今、天皇制を考える」を終えて

30年前は「自粛」ムードが社会全体をおおい、暗い雰囲気でしたが、今回は「生前退位」ということで、打って変って「お祝い」一色となりました。しかし、天皇制を賛美する動きは共通していました。異様・異常な風景が出現するだろう、異論や異議は顧みられないだろうとの予想のもと、「協会」らしい切り口から問題提起しようと、今年のテーマはこれしかないと決め打ちをして企画しました。

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映画「天皇と軍隊」は、象徴天皇制として生き延びた天皇制を新憲法制定への過程とマッカーサー(占領軍)の思惑とを絡めて解き明かしました。天皇自身の延命と「國体」の護持を図る者と利用価値を見出した者との利害が一致したことが決定的でした。結果、天皇の戦争責任は不問に付され、憲法第1条の座を獲得し、「断絶」すると思われた戦前と戦後は、曖昧模糊とした「象徴天皇制」によってつながれました。貴重なフィルムと証言を織り交ぜた本作は必見です。

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横田さんは、資料を駆使しながら、長年の研究をふまえ、論理的に憲法規範から逸脱する象徴天皇制の欺瞞を論理的に指摘し、参加者の多くが「目からうろこ」との感想をもらしたとおり、確信的でラジカルな話でした。私たちの目の前で「退位・即位・改元」に関する諸儀式が取り行われているが、その多くが違憲・違法を承知で堂々と遂行されているが、そうした指摘・指弾はほとんどなされない。そもそも「象徴たる天皇」の仕事は憲法第7条が規定している「国事行為」のみであり、あちこち出かけたりしているのは、勝手にやっていることで公務ではない。それなのに、しんどいから辞めたいと言い出すのは本末転倒だ。など、事態の異様さを舌鋒鋭く批判しました。

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残念だったのは、どちらも参加者が25人と26人しかなかったことです。30年前は自粛や賛美に対して、天皇制を問い返すとりくみが各地で行われましたが、今回はすっぽりと「祝意」の渦に呑み込まれた感があります。この落差は「象徴天皇制」が人々に受け入れられ、この社会に根づいていることを示していると思います。

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しかし、横田さんが言うように「差別以外の何ものでもない天皇制」はなくすべきものです。そのためには人権意識を徹底して乗り越えていくしかないと言われましたが、まさしく「差別・人権」の視点から天皇制をとらえ、とりくみをしていくことが必要だと思います。

2019年5月30日 (木)

「2019特別講座」第1講がおこなわれました

  529日、豊中人権まちづくりセンターを会場に「2019特別講座」の第1講がおこなわれ、2009年に制作されたフランスのドキュメンタリー映画「天皇と軍隊」を上映しました。

この映画は海外の人々に向けて日本の天皇制について紹介する内容ですが、戦後の日本で矛盾や曖昧さを抱えたまま存在しているものとして、天皇制だけでなく、日本の憲法や自衛隊、靖国神社   などについても取り上げられています。

「なぜ、天皇は戦争責任について問われなかったのか?」「なぜ、天皇制は戦後も維持されたのか」「憲法9条はどのような経過をたどって誕生したのか」などについて知ることができました。

また、上映後には参加者の方々と感想や意見を共有する場をもちました。そこでは天皇制や映画の内容だけでなく、安倍政権や原発のこと、今のマスコミ報道のあり方など、参加者それぞれが感じている日本の問題・課題について出され、それらについて全員で共有することができました。

僕は子どもの頃から部落問題をとおして天皇制について学んできました。だから天皇制は差別以外のなにものでもなく、天皇制を認めることは部落差別を認めることにも等しいと思っています。

昨日のあの場では上手く表現できませんでしたが、僕自身にとっても、子どものころから感じてきていた天皇制の違和感について改めて考える機会になりました。

 

特別講座の第2講は来週65日におこなわれる予定です。「象徴天皇制と私たち」をテーマに九州大学名誉教授の横田耕一さんからお話いただきます。ぜひ、ご参加ください。

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2019年5月28日 (火)

「特別講座」を前に

 

今年度の特別講座では、改めて「天皇制」について考えます。 

 

2回連続で、第1講は、映画「天皇と軍隊」を上映、第2講では「象徴天皇制と私たち」をテーマに横田耕一さん(九州大学名誉教授)にお話を伺います。

 

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今回の講座を前に、自分自身でも少し学んでおこうと、本を読むことにしました。 

 

1冊目は、部落差別の問題を題材にされた本「橋のない川」を書かれた住井すゑさんによる「さよなら天皇制」です。今から30年前に書かれた本ですが、戦争が終わって、人は皆平等になったからこそ、考えないといけないと書かれていたように思いますが、印象的でした。

 

豊中市内で話題となった「森友問題」の時に「教育勅語」の存在を知りましたが、その教育勅語の意味や、部落問題も天皇制の問題も同じ身分に関わる問題として、考えていかないといけないと思いました。

 

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2冊目は、65日にお越しいただく、横田耕一さんが書かれた「象徴天皇制と人権」という本です。この本も約30年前に書かれた本ですが、今も講演等でお話しされていますけれども、当時から「憲法や人権」という視点から「天皇制」の問題を考えてこられてきて、「戦前の天皇制」と「今日の象徴天皇制」の違いや日本国憲法の天皇に関わる内容と差別問題としても、詳しく書かれていました。

 

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2冊とも、とても短く読みやすい本です。協会の資料室にございますので、是非おすすめします。 

 

なお、今年度の特別講座は、529()65()の共に18:30からです。

 

この機会に、改めて私たちには知る権利がある事を再認識すると共に、これからの私たちの生活はどうあるべきか?につながる話だと思います。是非、お越し下さい。

 

 

 

 

 

 

 

2019年5月26日 (日)

映画「天皇と軍隊」

「週刊金曜日」1233号(5月24日)より

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2019年5月23日 (木)

怖ろしい「差別発言」

「朝日新聞」5月23日(朝刊)190523427

 

一体、どこからこんな荒唐無稽な話を思いついたのか?しかもそれを人前で堂々としゃべるとは?部落問題を知らないにもほどがある。差別意識のかたまりとしか言いようがない。

この長谷川氏は、3年前にも「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」との差別暴言もしており、札付きの差別者といってもいい。ネットで問題になっても、「史実を述べる事が貴殿には差別発言ですか」「悪意を持ってレッテル貼り」などと居直った。ところが、一転して「全面謝罪、完全撤回」に追い込まれた。

もう人間としてアウトといっていいが、こんな人物を参院選の公認候補にしている「日本維新の会」の責任も大きい。

 

2019年5月22日 (水)

ごあいさつ「役員体制が変わりました」

関係者のみなさんへ

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(一財)とよなか人権文化まちづくり協会

理事長   大源 文造

ごあいさつ

 

 日頃は、当協会に多大なるご支援・ご激励をいただき、ありがとうございます。

 さて、このたび、役員体制が変わりましたのでお知らせいたします。

 理事長には前・市教育長の大源が就任いたしました。

 新理事長のもと、役員・事務局一同、全力を尽くす所存ですので、旧来に倍しますご鞭撻・ご厚情をお願いいたします。

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  • 評議員

浅野 真吾(新任)

植松 英子(新任)

寺本 美鶴

田口 治代(新任)

田中 渡

島田 忠雄

西田 正一

宮前 千雅子

山口 博之

 

  • 理事

桑高 喜秋

佐々木 寛治

大源 文造(新任)

玉置 好徳

中川 幾郎

西田 益久

西村 壽子

林  誠子

八塚 勇一

 

  • 監事

青木 康二

 

  • 任務分担

理事長 大源 文造

副理事長 玉置 好徳

事務局長 佐々木 寛治

 

  • 事務局員

酒井 留美

重本 洋輔

福島 智子

森山 輝子

 

※五十音順(敬称略)

 

 

2019年5月18日 (土)

2019定時評議員会を終えて

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昨夜、無事に終えることができました。

2018年度の事業報告、会計決算報告、監査報告の承認に続き、理事の再任と新任、評議員の退任と新任が承認されました。

また、その後開かれた理事会で新しい体制が決まりました。

私たちを取り巻く状況は予断を許さず、前途はクリアーではありませんが、難局を乗り切り、新しい時代を創っていけるように奮闘したいと思います。

後日、改めて報告をさせていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

(SSK)

 

 

2019年5月15日 (水)

豊中市の「回答」

「同和問題解決協議会」の答申の誠実な履行を求めて、3月13日に市に「申し入れ」を行いましたが、その

「回答」を紹介します。

 

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豊人人第66号

令和元年(2019年)58

 

一般財団法人とよなか人権まちづくり協会

理事長  中 川 幾 郎 様

 

豊中市長  長 内 繁 樹

 

 

同和問題解決推進協議会「答申」をふまえた同和行政の推進

                   (回答)

 

 本市は、同和問題の解決を図るため、人権文化のまちづくりをすすめる条例、豊中市同和行政基本方針、豊中市同和行政推進プラン、豊中市人権教育・啓発基本計画などに基づき、市民、事業者、団体等と連携して施策を推進しています。

 その結果、環境改善等の分野では、大きく改善が進みましたが、地区問い合わせや差別落書きなどが未だ発生しており、近年ではインターネット上で差別を助長する情報等が流布されるなど同和問題の完全解決には至っていません。

 このような状況の中、同和問題の解決を図るための具体的な教育・啓発の進め方について、その方向性や手法、教材などの開発に向けた指針や提案をいただくため、平成28年(2016年)8月、豊中市同和問題解決推進協議会に諮問し、平成30年(2018年)3月に答申を受けました。

 答申では、「若い世代は多様な人権問題を学校で学ぶ機会を提供されているが、同和問題について学ぶ機会が以前に比べて減少していること」や「経験豊かな教職員、保育者の急速な世代交代により、部落問題学習の実践や人権保育実践の継承が難しくなっていること」などから、若い世代を中心とした教育・啓発の重要性と具体的な提案が示されました。

 市としては、答申を尊重し具体化するのが行政の役割であると認識しています。

 本市では、令和元年(2019年)に人権についての市民意識調査を実施し、その調査結果から見えてきた課題や答申をふまえ、同和問題を含む人権に関係する方針や計画の点検を行い、より効果的な人権教育・啓発を進めていきます。

 

●あまりに簡潔過ぎて、言わんとするところを読み取ることが難しいです。困りました。(SSK)

ブックトークに初参加しました!!

本日、ブックトークに初めて参加しました。

 

参加者は僕を合わせた5人で、

 

アイスブレイクを兼ねた「笑いヨガ」で緊張をほぐした後、

 

パレスチナ問題や黒人差別、3.11をテーマにした本、

 

それから時代小説や料理本まで、

 

それぞれが持ち寄った本を順番に紹介していきました。

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僕は今回初参加ということもあり、自分の順番がくるまで、

 

「こんな本を紹介して大丈夫なのか?」と心配しましたが、

 

それぞれが話題の引き出しの広さでカバーしてくれたおかげで

 

安心して最後まで参加することができました。

 

また、本のテーマや中身に沿った話だけでなく

 

映画やマスコミ報道など、いろんな話ができて、

 

とても楽しく有意義な時間になりました。

 

ブックトークは今年度より毎月第3水曜日に実施しています。

 

ぜひ、気軽にご参加ください。

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